肺炎球菌結合型ワクチンは、肺炎球菌による重い感染症を予防するワクチンです。
肺炎球菌には100以上の型[種類]がありますが、その中で子どもたちに重い病気を引き起こすことが多い種類を選んで肺炎球菌ワクチンが作られています。

肺炎球菌結合型ワクチンってどんなもの?

どうして子どもは肺炎球菌ワクチンを接種しないといけないの?

肺炎球菌は、子どもの感染症の二大原因のうちのひとつの細菌です。まわりを莢膜(きょうまく)というかたい殻におおわれた菌で、人間の免疫が攻撃しにくい構造をしています。なかでも小さい子ども、特に赤ちゃんのうちは、まだこの細菌に対する抵抗力がないため、ワクチン接種が必要になります。

肺炎球菌の写真

肺炎球菌ワクチンを接種するとどんな病気を予防できるの?

肺炎球菌は、多くの子どもの鼻やのどにいる身近な細菌です。ふだんはおとなしくしていますが、子どもの体力や抵抗力が落ちた時などに、いつもは菌がいないところに肺炎球菌が入り込んで、いろいろな病気(感染症)を引き起こします。

1)細菌性髄膜炎(さいきんせいずいまくえん)

脳や脊髄をおおっている髄膜に菌が侵入して炎症を起こします1)。肺炎球菌ワクチンが普及する前の日本では、毎年約1,000人の子どもが細菌性髄膜炎にかかっているといわれていました。ときに命にかかわったり、重い後遺症が残ったりすることもあります2)

1)国立感染症研究所:細菌性髄膜炎とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/404-bac-megingitis.html 2024/01/22参照
2)「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」作成委員会編集:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014(日本神経学会,日本神経治療学会,日本神経感染症学会監修),2014,南江堂

2)菌血症(きんけつしょう)

血液の中に菌が入り込むこと。放っておくと、血液中の菌がいろいろな臓器にうつり、髄膜炎など重い病気を引き起こす心配があります3)

3)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」各論No.10-19,22 2018年3月-2020年10月作成・改訂
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-02haienkyukin_202312.pdf 2024/01/18参照

3)重症肺炎[菌血症を伴う肺炎]

肺炎球菌という名の通り、肺炎の原因になる。症状が重く、入院が必要になることもあります4)

4)千葉菜穂子:日本化学療法学会雑誌 59(6): 561, 2011

肺炎球菌ワクチンはいつ、どうやって接種するの?

肺炎球菌ワクチンは、生後2か月齢以上から接種できます。2か月齢になったらなるべく早く接種しましょう。
標準的な接種開始年齢[生後2か月から6か月]で接種した場合は1)、0歳代[生後2~11か月齢]で3回、1歳代[12~15か月齢]で1回の追加接種をして、合計4回接種しますが、接種回数は、肺炎球菌結合型ワクチンをはじめて接種する月齢/年齢によって異なります。 かかりつけ医に相談して、早めにスケジュールを決めましょう。
また、肺炎球菌ワクチンは複数の種類がありますので、詳しいことを知りたい方は医師にご相談ください。

1)プレベナー20水性懸濁注電子添文 2024年8月改訂(第2版、効能変更、用法変更)

標準的な接種開始年齢[生後2か月から6か月]で接種した場合

肺炎球菌ワクチンを接種しているのは、日本の子どもだけ?

肺炎球菌ワクチンは、世界中で導入されています。
2022年時点で、141カ国が肺炎球菌ワクチンを国の予防接種プログラムに導入しています1)

1)International Vaccine Access Center (IVAC), Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health. VIEW-hub. www.view-hub.org Accessed October 17, 2022.

肺炎球菌結合型ワクチンQ&A

監修:千葉大学真菌医学研究センター 感染症制御分野 教授 石和田 稔彦 先生

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンって、どんなワクチン?

    A. 肺炎球菌という細菌によって生じる重い感染症を予防するワクチンです。
    肺炎球菌は細菌の一つで、名前のとおり、大人では肺炎になることが多いのですが、乳幼児の場合、肺炎のほかにも中耳炎や、菌が脳を包む膜や脳自体にまで入りこむ細菌性髄膜炎というこわい病気になることがあります1,2)。肺炎球菌結合型ワクチンは、肺炎球菌に感染する前にワクチンを接種して、ワクチンに含まれる肺炎球菌の血清型による、小児の侵襲性感染症を予防することを目的としています。

    1)厚生労働省:肺炎球菌感染症(小児)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pneumococcus/index.html 2023/08/15参照
    2)国立感染症研究所:細菌性髄膜炎とは
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/404-bac-megingitis.html 2023/08/15参照

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンに含まれる血清型って何?

    A. 肺炎球菌の多くは莢膜という膜を持っていて、これが病原性の主体となります。莢膜には100種類以上のタイプがあり、これが肺炎球菌の血清型と呼ばれています3)
    そして、肺炎球菌ワクチンは、100種類以上の肺炎球菌の血清型の中で、重篤な病気を引き起こしたり、抗菌薬が効きにくい血清型を選び、その莢膜の成分をもとに作られています4)。莢膜の成分とキャリア蛋白を結合して作られたのが結合型ワクチンです。
    肺炎球菌ワクチンは、ワクチンに含まれる血清型の肺炎球菌に対して感染予防効果を示すと考えられています3)

    肺炎球菌結合型ワクチンに含まれる血清型って何?

    3)石和田稔彦:診断と治療 Vol.108 No.12:1661-1665、2020
    4)石和田稔彦:日本臨牀 69巻 9号:1584-1588、2011

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンに種類はありますか?

    A. ワクチンに含まれる血清型の数が違うワクチンが複数あります。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンは全ての子どもたちが受けた方が良いの?

    A. 2007年に、WHO[世界保健機関]は肺炎球菌結合型ワクチンを世界中で定期接種とするように推奨を出しました。それだけ先進国・開発途上国を問わず各国で肺炎球菌による病気が多いためです。日本でも、肺炎球菌ワクチンは小児の定期接種に指定されています。

  • Q. 小児の予防接種の「定期接種」って何?

    A. 定期接種のワクチンとは、「予防接種法」と呼ばれる予防接種の規則を決めた法律で全ての子どもたちが受けることを推奨されているワクチンのことです。現在、日本の子どもたちには、定期接種のワクチンとして14種類が認められており、その中に肺炎球菌ワクチンも含まれています5)

    5)発行:日本小児科学会~日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」A-02 2024年作成
    http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_A-02teikiseishu_20240401.pdf 2024/07/16参照

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンの定期接種を受けるとき、費用はかかる?

    A. それらのワクチンの費用は、原則、地方自治体から支払われますので、無料で接種が可能です5)

    5)発行:日本小児科学会~日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」~No.02 2020年10月
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_02-2teikisesshu.ninisesshu.pdf 2024/02/18参照

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンは何歳から受けられる?

    A. 生後2か月齢以上から接種できます。
    肺炎球菌による髄膜炎は約70%が0歳代でかかり、それ以降は年齢とともに少なくなりますが、5歳くらいまではかかる危険性がある年齢です6)。2か月齢になったらなるべく早く接種しましょう。

    6)「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」作成委員会編集:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014(日本神経学会,日本神経治療学会,日本神経感染症学会監修),2014,南江堂

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種するとどんな病気を予防できる?

    A. ワクチンに含まれる肺炎球菌の血清型(種類)による細菌性髄膜炎や菌血症など、これらの病気を予防するために接種します。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種すると、必ず感染を予防できる?

    A. 肺炎球菌結合型ワクチンは、ワクチンに含まれる血清型の肺炎球菌に対して感染予防効果を示すと考えられていますが、ワクチンを接種しても感染症を発症することはあります3)。また、ワクチンに含まれない血清型の肺炎球菌に感染することもあります。

    3)石和田稔彦:診断と治療 Vol.108 No.12:1661-1665、2020

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種すると、どのような副反応が現れる?

    A. ワクチンを接種した後にみられる反応のことを副反応といい、肺炎球菌結合型ワクチンを接種した後にみられる副反応の多くは、発熱、注射部位の異常(腫れや赤みなど)です。副反応かどうか心配な場合は接種を受けた医療機関の医師に相談するようにしてください。
    またまれですが、ショックやアナフィラキシー様反応[呼吸困難や全身性のじんましんなどを伴う重いアレルギー反応]などの重い副反応が報告されています。接種後30分以内は特に注意深い観察が必要なので、接種を受けた後は病院で様子をみるか医師とすぐ連絡のつくところにいるようにしてください。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンは他のワクチンと同時に接種することができる?

    A. 肺炎球菌結合型ワクチンは他のワクチンと同時接種することができます。
    同時接種は、適切な時期に必要なワクチン接種を可能にすることで、ワクチンの接種忘れを防ぐことができます。また、医療機関への受診回数を減らすことができるため、接種に費やす保護者の時間、手間、費用を節約することができます。肺炎球菌結合型ワクチンを単独接種で行うか同時接種で行うかどうかは、医師とよく相談して決めるようにしましょう。

監修:千葉大学真菌医学研究センター 感染症制御分野 教授 石和田 稔彦 先生

2024年9月作成 PRV45O003A