小児科医が教えるワクチン副反応への上手な対応方法
ワクチンを接種した後に副反応が現れたらどうしよう・・・と心配される保護者の方も多いですが、正しい知識を持つことで、過度に副反応を怖がらずに冷静に対応することができます。
(1)ワクチンを受ける前、(2)受けた直後、(3)自宅に戻ってから、
この3つのポイントで、しっかりと確認することが、副反応への適切な対応につながります。(1)から(3)の3つのポイントに分けてご説明します。
(1)肺炎球菌ワクチンを受ける前に大切なこと
副反応への不安を減らすためにも、肺炎球菌ワクチンの接種を受ける前に、次のことをきちんと保護者が理解できているか確認しましょう。
・何の目的で肺炎球菌ワクチンを接種するかを理解する
定期接種プログラムでは、小さいうちに何種類ものワクチンを接種するために、このワクチンを接種することでどんな病気の予防につながっているのか分からずに、なんとなく接種時期が来たから接種するといった流れになってしまいがちですが、一つ一つのワクチンについて、目的を理解することで、接種後の副反応にも適切に対応しやすくなります。
肺炎球菌結合型ワクチンは、ワクチンに含まれる型の肺炎球菌による侵襲性感染症を予防するために接種します。
肺炎球菌に感染した後、菌が血液に乗って、脳に感染すると髄膜炎をおこします。髄膜炎になると重い後遺症が残ったり、死亡するリスクがあるので、ワクチンを接種して予防する必要があります1)。
1)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」各論No.10-19,22 2018年3月-2020年10月作成・改訂 http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-02haienkyukin_202312.pdf 2024/02/22参照
・肺炎球菌ワクチンを接種するとどんな副反応があるかを理解する
肺炎球菌のワクチン接種によってどんな副反応があるのかを知っておくことで、接種後の副反応に冷静に対応できます。
肺炎球菌結合型ワクチンの接種後によくみられる副反応は、発熱と注射した部位の腫れや赤みです。
肺炎球菌結合型ワクチンを接種すると、37.5℃以上の熱が出ることがあり、発熱のほとんどは接種した当日や翌日に認められます。また、注射した部位が腫れたり、赤くなったり、あるいは硬くなったりすることがあります。
・肺炎球菌結合型ワクチンを接種できない場合に当てはまっていないか確認する
肺炎球菌結合型ワクチンを接種できない場合という決まりがあります。この条件に当てはまっているのに、ワクチンを接種してしまうと重大な副反応が出てしまうリスクがあります。 事前にしっかりと確認しましょう。
37.5°C以上の発熱をしている場合
重篤な急性疾患にかかっている場合
肺炎球菌ワクチンやその成分で重篤なアレルギーを起こしたことがある場合
1)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」各論No.10-19,22 2018年3月-2020年10月作成・改訂
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-02haienkyukin_202312.pdf 2024/02/22参照
・肺炎球菌ワクチンを接種する日、体調が良いか確認する
定期接種のスケジュールも詰まっており、お仕事や保育園のおやすみなど調整も大変なので、 少しぐらい体調に不安があっても、決めた日に接種したいという思いがあるかもしれません。 しかし、体調不良の状態でワクチンを接種することはおすすめできません。接種できるかどうか保護者が自己判断せずに、必ず医師に相談しましょう。
(2)肺炎球菌ワクチンを接種した直後に大切なこと
緊急性の高い副反応にきちんと対応するためにも、ワクチンを接種した後、30分はお子さんから目を離さないようにして、医師とすぐに連絡が取れる状況にしておきましょう。非常にまれではありますが、ワクチンの接種によるアナフィラキシーなどの重篤で緊急の対応が必要な副反応の多くは、接種後30分以内に現れるためです。
肺炎球菌ワクチンを接種した直後、30分はお子さんの様子を気をつけてみておく
(3)肺炎球菌ワクチンを接種して、自宅に戻ってから大切なこと
ワクチンを接種した後は、自宅に戻って通常の生活ができます。この中で大切なことは、もし対応が必要な副反応が現れた場合には、それに気づき、医療機関と速やかに連絡を取ることです。
・接種後に高熱やけいれんなどの異常が出現した場合は、速やかに医師の診察を受ける
・接種後1週間は体調に注意する
・接種部位は清潔に保つ。入浴しても、接種部位をこすることはやめる
・接種した当日は激しい運動はさける
このようにして、肺炎球菌ワクチンを接種する前、接種した直後、接種した後の生活でどのようなことに気をつければ良いか、一連の流れで知っておくと、副反応が現れた場合にも、冷静に対応することができます。
監修:千葉大学真菌医学研究センター 感染症制御分野 教授 石和田 稔彦 先生
2024年9月作成 PRV45O003A