これで分かる、
肺炎球菌結合型ワクチン接種について Q&A

肺炎球菌結合型ワクチンQ&A

監修:千葉大学真菌医学研究センター 感染症制御分野 教授 石和田 稔彦 先生

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンって、どんなワクチン?

    A. 肺炎球菌という細菌によって生じる重い感染症を予防するワクチンです。
    肺炎球菌は細菌の一つで、名前のとおり、大人では肺炎になることが多いのですが、乳幼児の場合、肺炎のほかにも中耳炎や、菌が脳を包む膜や脳自体にまで入りこむ細菌性髄膜炎というこわい病気になることがあります1,2)。肺炎球菌結合型ワクチンは、肺炎球菌に感染する前にワクチンを接種して、ワクチンに含まれる肺炎球菌の血清型による、小児の侵襲性感染症を予防することを目的としています。

    1)厚生労働省:肺炎球菌感染症(小児)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pneumococcus/index.html 2023/08/15参照
    2)国立感染症研究所:細菌性髄膜炎とは
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/404-bac-megingitis.html 2023/08/15参照

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンに含まれる血清型って何?

    A. 肺炎球菌の多くは莢膜という膜を持っていて、これが病原性の主体となります。莢膜には100種類以上のタイプがあり、これが肺炎球菌の血清型と呼ばれています3)
    そして、肺炎球菌ワクチンは、100種類以上の肺炎球菌の血清型の中で、重篤な病気を引き起こしたり、抗菌薬が効きにくい血清型を選び、その莢膜の成分をもとに作られています4)。莢膜の成分とキャリア蛋白を結合して作られたのが結合型ワクチンです。
    肺炎球菌ワクチンは、ワクチンに含まれる血清型の肺炎球菌に対して感染予防効果を示すと考えられています3)

    肺炎球菌結合型ワクチンに含まれる血清型って何?

    3)石和田稔彦:診断と治療 Vol.108 No.12:1661-1665、2020
    4)石和田稔彦:日本臨牀 69巻 9号:1584-1588、2011

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンに種類はありますか?

    A. ワクチンに含まれる血清型の数が違うワクチンが複数あります。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンは全ての子どもたちが受けた方が良いの?

    A. 2007年に、WHO[世界保健機関]は肺炎球菌結合型ワクチンを世界中で定期接種とするように推奨を出しました。それだけ先進国・開発途上国を問わず各国で肺炎球菌による病気が多いためです。日本でも、肺炎球菌ワクチンは小児の定期接種に指定されています。

  • Q. 小児の予防接種の「定期接種」って何?

    A. 定期接種のワクチンとは、「予防接種法」と呼ばれる予防接種の規則を決めた法律で全ての子どもたちが受けることを推奨されているワクチンのことです。現在、日本の子どもたちには、定期接種のワクチンとして14種類が認められており、その中に肺炎球菌ワクチンも含まれています5)

    5)発行:日本小児科学会~日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」A-02 2024年作成
    http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_A-02teikiseishu_20240401.pdf 2024/07/16参照

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンの定期接種を受けるとき、費用はかかる?

    A. それらのワクチンの費用は、原則、地方自治体から支払われますので、無料で接種が可能です5)

    5)発行:日本小児科学会~日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」~No.02 2020年10月
    https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_02-2teikisesshu.ninisesshu.pdf 2024/02/18参照

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンは何歳から受けられる?

    A. 生後2か月齢以上から接種できます。
    肺炎球菌による髄膜炎は約70%が0歳代でかかり、それ以降は年齢とともに少なくなりますが、5歳くらいまではかかる危険性がある年齢です6)。2か月齢になったらなるべく早く接種しましょう。

    6)「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」作成委員会編集:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014(日本神経学会,日本神経治療学会,日本神経感染症学会監修),2014,南江堂

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種するとどんな病気を予防できる?

    A. ワクチンに含まれる肺炎球菌の血清型(種類)による細菌性髄膜炎や菌血症など、これらの病気を予防するために接種します。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種すると、必ず感染を予防できる?

    A. 肺炎球菌結合型ワクチンは、ワクチンに含まれる血清型の肺炎球菌に対して感染予防効果を示すと考えられていますが、ワクチンを接種しても感染症を発症することはあります3)。また、ワクチンに含まれない血清型の肺炎球菌に感染することもあります。

    3)石和田稔彦:診断と治療 Vol.108 No.12:1661-1665、2020

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種すると、どのような副反応が現れる?

    A. ワクチンを接種した後にみられる反応のことを副反応といい、肺炎球菌結合型ワクチンを接種した後にみられる副反応の多くは、発熱、注射部位の異常(腫れや赤みなど)です。副反応かどうか心配な場合は接種を受けた医療機関の医師に相談するようにしてください。
    またまれですが、ショックやアナフィラキシー様反応[呼吸困難や全身性のじんましんなどを伴う重いアレルギー反応]などの重い副反応が報告されています。接種後30分以内は特に注意深い観察が必要なので、接種を受けた後は病院で様子をみるか医師とすぐ連絡のつくところにいるようにしてください。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンは他のワクチンと同時に接種することができる?

    A. 肺炎球菌結合型ワクチンは他のワクチンと同時接種することができます。
    同時接種は、適切な時期に必要なワクチン接種を可能にすることで、ワクチンの接種忘れを防ぐことができます。また、医療機関への受診回数を減らすことができるため、接種に費やす保護者の時間、手間、費用を節約することができます。肺炎球菌結合型ワクチンを単独接種で行うか同時接種で行うかどうかは、医師とよく相談して決めるようにしましょう。

肺炎球菌についてのQ&A

監修:千葉大学真菌医学研究センター 感染症制御分野 教授 石和田 稔彦 先生

  • Q. 肺炎球菌ってどんな菌?

    A. ふだん小児科に来る子どもの病気の原因として、もっとも多い菌のひとつです。
    肺炎球菌は名前のとおり、大人では肺炎になることが多いのですが、乳幼児の場合、肺炎のほかにも中耳炎や、菌が脳を包む膜にまで入りこむ細菌性髄膜炎というこわい病気になることがあります1,2)。 また、肺炎球菌はまわりにとてもかたい殻があるので、からだを細菌から守ろうとはたらく白血球によってやっつけることがむずかしい、毒性の強い菌です3)

  • Q. 子どもはふつう、肺炎球菌をもっていないの?

    A. 肺炎球菌は子どもの多くがノドや鼻の奥にもっている、とても身近な菌です。生まれたばかりの赤ちゃんは肺炎球菌をもっていませんが、ほかの赤ちゃんと遊んだり、保育所に通うようになったりすると、いつのまにか菌をもらってしまう可能性が高くなります1,4)。 菌をもっていてもかならず悪さをするわけではありませんが、月齢の低い子どもほど肺炎球菌への抵抗力が弱いため、肺炎球菌の病気にかかりやすいといわれています1,4)

  • Q. 肺炎球菌感染症を予防しないといけないのはナゼ?

    A. ときに命にかかわる病気や、後遺症が残る病気にかかることがあるからです。 肺炎球菌はいつもは子どものノドや鼻の奥にいておとなしくしていますが、体力や抵抗力が落ちたりといった何かのきっかけでからだの中に入り込むと、中耳炎や肺炎、さらにこわい菌血症や細菌性髄膜炎になることがあります1,5)。 菌血症とは、菌が血液の中に入り込んだ状態で、細菌性髄膜炎のひとつ前の段階にあたります5)。

  • Q. 子どもが肺炎球菌をもっているかどうか調べることはできる?

    A. ふつうは、何かの病気になったときに検査をします。
    肺炎球菌をもっているかどうかは、子どものノドや鼻の奥の菌を調べればわかりますが、ふつう、健康なときに検査することはありません。気管支炎や肺炎、中耳炎など、肺炎球菌やそのほかの細菌感染が考えられる病気にかかったときや、菌血症や細菌性髄膜炎のような症状があったときに、医師の判断で血液検査などの検査を行います6)

  • Q. 肺炎球菌は子どもが当たりまえにもっている菌なのに、何がきっかけで病気になるの?

    A. 病気になるきっかけはさまざま。いつ、だれにおきてもおかしくありません。 肺炎球菌による中耳炎や肺炎は、カゼなどをきっかけになることが多いのですが、菌血症や細菌性髄膜炎は必ずしも何かのきっかけがあってなるというわけではなく、菌をもっていればいつ、だれが病気になってもおかしくないといえます7)。 特に体力や抵抗力が落ちたときは注意が必要です。

  • Q. 耐性菌って何ですか? 耐性菌による病気にかかってしまうとなおらないの?

    A. 耐性菌とは、菌をやっつけるための薬[抗菌薬]が効きにくくなっている菌のことです。これまで、日本では子どもの発熱時などに抗菌薬を多く使ってきたことから、薬が効きづらくなった肺炎球菌が増えています8)。 耐性菌に対しては薬の量を増やしたり、新しい薬を使ったりすることで治療できますが、病気にかかってから治療するよりは、かからないことが何より大切です。そのためにも、ワクチンで予防をしましょう。

  • Q. 子どもの肺炎球菌ワクチンは日本だけのもの?

    A. 子どもの肺炎球菌ワクチンはすでに世界120カ国以上で取り入れられています9)。日本には2010年から導入され、2013年4月には5歳未満を対象に定期接種になりました10,11)。なお、子どもの肺炎球菌ワクチンについては、WHO[世界保健機関]がすべての国での定期接種をすすめています12)

  • Q. 子どもが肺炎球菌をもっていても、ワクチンを打てば病気は防げるの?

    A. 肺炎球菌にはいくつかの種類があり、すべての種類についてワクチンが対応しているわけではありませんが、ワクチンが対応している肺炎球菌による病気は、予防できることが期待できます。

  • Q. 肺炎球菌ワクチンを受ければ、細菌性髄膜炎を防げるの?

    A. 肺炎球菌ワクチンだけでは、細菌性髄膜炎のすべてを防ぐことはできません。 子どもの細菌性髄膜炎のおもな原因には、ヒブ[インフルエンザ菌b型:Hib]と肺炎球菌があります。それぞれヒブワクチンと肺炎球菌結合型ワクチンで予防できますが、これらのワクチンが導入されるまでは、この2つの菌が細菌性髄膜炎の原因の約80%を占めていました13)。細菌性髄膜炎の大部分を予防するためには、この2つのワクチンを両方とも接種することが大事です。ただしワクチンに含まれない種類[型]の肺炎球菌による細菌性髄膜炎は予防することができません。また、生まれて間もない赤ちゃんの場合、大腸菌やGBS[B群溶レン菌]が原因で細菌性髄膜炎になることがあり11)、残念ながらこれらもワクチンでは防げません。

  • Q. 肺炎球菌による菌血症、細菌性髄膜炎ってどんな病気?

    A. どちらもはじめはカゼと区別しづらく、重症化することもある病気です。 菌血症は、いつもは子どものノドや鼻の奥にいる肺炎球菌が、何かのきっかけで血液の中に入り込んでいる状態です5)。そして、菌血症がさらにすすむと、まれに菌が脳を包む膜にまでいき、細菌性髄膜炎になります。肺炎球菌による細菌性髄膜炎はときに命にかかわったり、難聴やマヒなどの後遺症が残る場合もある病気です5)。はじめは発熱以外にほとんど症状がなく、カゼと区別がつかないため、早めの発見がむずかしいといわれています5)

  • Q. 肺炎球菌が原因の発熱や中耳炎などについて、カゼやほかの原因のものと見分ける方法はあるの?

    A. おうちで見分けるのはなかなかむずかしいですが、日ごろから子どもの様子をよく観察しましょう。 肺炎球菌が原因の場合、熱が急に上がる、短時間で具合が悪くなるなど進行が早いことがありますが2,14)、おうちで見分けるのはむずかしいでしょう。ただ、熱があっても機嫌は悪くなかったり、食べたり飲んだりできているようであれば、それほどあわてなくてもよいでしょう。子どもの変化を敏感に感じとれるのは保護者のみなさんです。ふだんから子どもの様子をよく観察してあげてください。

  • Q. 肺炎球菌の病気にかかっている子どもから、同じ病気がうつってしまうことはないの?

    A. 病気そのものがうつるというより、肺炎球菌をもらうことがあります1)。肺炎や菌血症など、肺炎球菌が原因の病気そのものがだれかにうつるということはありません。病気にかかっている子どもと遊んだりすることで、肺炎球菌をもらうことはあっても、だからといって同じ病気になるとはかぎりません。

  • Q. インフルエンザのように、肺炎球菌による病気がはやる季節はあるの?

    A. 肺炎球菌による病気は、決まった季節にはやるものではありません。 肺炎球菌による病気のうち、たとえばインフルエンザなどがきっかけで起こることの多い肺炎などは、インフルエンザのはやる季節に多いといわれていますが、菌血症や細菌性髄膜炎は決まった季節にはやるものではありません。そのため、この時期さえ気をつけていればよいというものではないので、年間を通じて注意が必要です。

  • Q. 保育所に子どもをあずけるつもりだけど、何か特別な対策は必要?

    A. ワクチンで予防できる病気があります。できれば保育所に入る前にワクチンを受けて、病気から子どもを守りましょう。 保育所などの集団生活の場ではいろんな子どもたちと共同生活をすることになるので、肺炎球菌にかぎらず、はしかや水ぼうそうなどワクチンで予防できる病気については、保育所に入る前にワクチンを受けておくとよいでしょう。ワクチンは病気から自分の子どもを守るだけでなく、ほかの子どもたちに病気が広まるのを防ぐ役割も果たします15)。ワクチンによっては何度か受けなくてはならないものもあります。受けられる時期がきたら早めに受けておくとよいでしょう。

1)厚生労働省:肺炎球菌感染症(小児)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pneumococcus/index.html
2024/01/22参照
2)国立感染症研究所:細菌性髄膜炎とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/404-bac-megingitis.html 2024/01/22参照
3)中野貴司:小児感染免疫 21(3): 245, 2009
4)厚生労働省:小児用肺炎球菌ワクチンの切替えに関するQ&A
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_haienkyuukin.html 2024/01/22参照
5)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」各論No.10-19,22 2018年3月-2020年10月作成・改訂
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-02haienkyukin_202312.pdf 2024/01/18参照
6)厚生労働省:感染症法に基づく医師の届け出 13侵襲性肺炎球菌感染症
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-05-09-02.html 2023/10/13参照
7)厚生労働省健康局結核感染症課:抗微生物薬適正使用の手引き 第二版
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000573655.pdf 2024/01/22参照
8)吉田耕一郎:昭和医会誌 69(3): 212, 2009
9)プレベナー13®水性懸濁注 医薬品インタビューフォーム 2023年9月改訂(第10版)
10)日本呼吸器学会呼吸器ワクチン検討委員会/日本感染症学会ワクチン委員会/日本ワクチン学会・合同委員会:6歳から64歳までのハイリスク者に対する肺炎球菌ワクチン接種の考え方(2021年3月17日)
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/guidelines/210317_teigen.pdf 2023/08/21参照
11)「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」作成委員会編集:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014(日本神経学会,日本神経治療学会,日本神経感染症学会監修),2014,南江堂
12)World Health Organization:Recommendations to assure the quality, safety and efficacy of pneumococcal conjugate vaccines, Annex 3, TRS No 977
https://www.who.int/publications/m/item/pneumococcal-conjugate-vaccines-annex3-trs-977 2023/08/15参照
13)砂川慶介ほか:感染症誌 84 (1): 33, 2010 14)日本耳科学会、日本小児耳鼻咽頭科学会、日本耳鼻咽頭科感染症・エアロゾル学会編:小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年版 https://www.otology.gr.jp/common/pdf/guideline_otitis2018.pdf 2023/08/15参照
14)日本耳科学会、日本小児耳鼻咽頭科学会、日本耳鼻咽頭科感染症・エアロゾル学会編:小児急性中耳炎診療ガイドライン2018年版 https://www.otology.gr.jp/common/pdf/guideline_otitis2018.pdf 2023/08/15参照
15)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」No.01 予防接種の意義, 2018年3月作成
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_A-01yoboseshu_202312.pdf 2024/02/20参照

細菌性髄膜炎に関するQ&A

監修:東京医科大学 微生物学分野 兼任教授 岩田 敏 先生

  • Q. 細菌性髄膜炎ってどんな病気?

    A. 細菌性髄膜炎は、ヒブ[インフルエンザ菌b型:Hib]や肺炎球菌などの細菌が、脳や脊髄(せきずい)を包む髄膜(ずいまく)の奥まで入りこんでおこる病気です1,2)。 ヒブワクチンや肺炎球菌結合型ワクチンが普及する前の日本では、毎年約1,000人の子どもが細菌性髄膜炎にかかっているといわれていました3)。 細菌性髄膜炎にかかると、命にかかわったり、重い後遺症が残ったりすることもあります1,2)

  • Q. 細菌性髄膜炎の原因は?

    A. 細菌性髄膜炎の原因菌には、インフルエンザ菌(ヒブ)、肺炎球菌、B群溶レン菌、大腸菌などがあります。
    ヒブワクチンや肺炎球菌結合型ワクチンが普及する前の日本では、ヒブによる細菌性髄膜炎が最も多く認められていました。肺炎球菌による細菌性髄膜炎はワクチン普及後も全体の20%を占める程度認められていて4)、重症になりやすく、命を落としたり重い後遺症が残ったりする3)ことから注意が必要です。

  • Q. 細菌性髄膜炎を発症すると、何が怖いの?

    A. 細菌性髄膜炎は、病気のはじまりが発熱や嘔吐など風邪の症状と区別がつきにくいので、早い段階で診断することがむずかしい病気です。また、耐性菌が増えているため、治療のための薬が効きにくいことがあり、最善の治療をつくしても、命を落としたり、重い後遺症が残ったりする場合があることが細菌性髄膜炎の怖さです。

  • Q. 細菌性髄膜炎にかかったとき、最初はどんな症状がみられる?

    A. 細菌性髄膜炎の初期症状は、発熱や嘔吐などカゼの症状とよく似ていて、特徴的な症状はみられません1,3)。経験のある小児科医でも、初期の段階で細菌性髄膜炎を発見するのはむずかしいといわれます。保護者のみなさんが病気を見分けることは困難ですが、以下のような症状がみられる場合で、いつもと違うと感じたときには、すぐに病院を受診しましょう。

    細菌性髄膜炎の可能性のある症状:
    急な発熱[高熱]、吐く・食べない・飲まない、ぐったりしている、意識がもうろうとしている、けいれん、泣き止まない・きげんが悪い など

  • Q. 細菌性髄膜炎にかかるとどうなるの?

    A. 細菌性髄膜炎にかかっても、早期に診断がつき治療薬の効果があれば、無事に退院することができます。しかし、重症化することも多く、発熱からわずか1日で命を落とす例もあります5)。 重症化の危険性は原因菌によってことなりますが、より重症になりやすいのは肺炎球菌が原因の髄膜炎です3)

  • Q. 細菌性髄膜炎にかかりやすい年齢は?

    A. 肺炎球菌やヒブによる細菌性髄膜炎はかかった子どもの約70%が0歳児で、2歳ぐらいまでの小さな子どもがかかりやすいとされています。 細菌性髄膜炎にもっともかかりやすいのは、病気とたたかう力[免疫力]が未発達な2歳ぐらいまでの小さな子どもです。細菌性髄膜炎は、年齢とともにかかりにくくなりますが、5歳ごろまでは危険年齢です。肺炎球菌が原因の髄膜炎は5歳を過ぎてもかかることがあります3)

  • Q. 細菌性髄膜炎にかかりやすい子どもの特徴は?

    A. 細菌性髄膜炎の原因となる肺炎球菌などの細菌は、ふだんから多くの子どものノドや鼻の奥にすみついているため、いつ、だれがかかってもおかしくありません1)
    子どもたちの20〜40%は鼻の奥の粘膜に肺炎球菌が常在していると考えられています6)

  • Q. 小児の細菌性髄膜炎を防ぐにはどうすればいい?

    A. 細菌性髄膜炎のすべてを予防できるわけではないですが、肺炎球菌結合型ワクチンとヒブワクチンで予防することが重要です。 乳幼児の細菌性髄膜炎は、原因となる肺炎球菌に対するワクチンで予防することが重要です。生後2か月から、遅くとも6か月ごろまでにはワクチンの接種を開始することが大切です。生後7か月を過ぎていても、小児の肺炎球菌による細菌性髄膜炎などの侵襲性感染症の予防を目的とした肺炎球菌結合型ワクチンは6歳未満まで接種できます。[※定期接種の対象となるのは5歳未満です。]ワクチンで細菌性髄膜炎を予防しましょう。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンは、いつごろから接種するの?

    A. 生後2か月から接種できます。 細菌性髄膜炎は、病気とたたかう力[免疫力]が未発達な小さな赤ちゃんがかかりやすい病気です。しっかりと免疫をつけるためには、生後2か月になったらできるだけ早く、接種を開始しましょう。

1)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」各論No.10-19,22 2018年3月-2020年10月作成・改訂
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-02haienkyukin_202312.pdf  2023/08/15参照
2)国立感染症研究所:細菌性髄膜炎とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/404-bac-megingitis.html 2023/08/15参照
3)「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」作成委員会編集:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014(日本神経学会,日本神経治療学会,日本神経感染症学会監修),2014,南江堂
4)砂川慶介ほか. 感染症誌 84(1): P33-41, 2010
5)World Health Organization:Meningitis 17 April 2023
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/meningitis 2023/08/21参照
6)菅 秀:小児内科 vol. 52 増刊号:P848-852 2020

副反応に関するQ&A

監修:千葉大学真菌医学研究センター 感染症制御分野 教授 石和田 稔彦 先生

  • Q. ワクチンの接種による「副反応」ってどういう意味?

    A. ワクチンの場合には、ワクチンの接種によって体に免疫反応が起こり、それによって感染症の発症を防ぐ免疫ができます。この免疫ができる以外の反応(例えば、発熱 ・ 注射部位の腫れなど)が発生することを「副反応」という用語を用いています1)

  • Q. ワクチンの「副反応」と、薬の「副作用」は違うの?

    A. 病気の治療に薬を使ったときに、本来の薬の作用とは異なる別の作用や、体に良くない、患者さんにとって不都合で有害な作用が起こったときに使われる言葉が「副作用」です。
    一方、ワクチンの接種によって体に免疫反応が起こりますが、免疫ができる以外の反応(例えば、発熱 ・ 注射部位の腫れなど)が発生することについて、「副反応」という用語を用いています1)
    そのため、ワクチンの「副反応」と薬の「副作用」は意味が異なります。

  • Q. ワクチンの「有害事象」って何?

    A. 薬もワクチンも、使用後に副作用あるいは副反応の他に、たまたま何かの原因によってある事象が起こることがあります。例えば薬をのんだり、ワクチン接種をした後に、食べ物が原因で嘔吐をしたり、虫に刺されて腫れたり、別の病気が原因で熱が出たりすることもあります。実際には、その原因はわからないことも多いのですが、それらをすべてまとめて、「有害事象」と呼びます。
    つまり有害事象には、その薬やワクチンとの因果関係が明らかなもの、不明なもの、他の原因によるものがすべて含まれます1)

    ワクチンの「有害事象」って何?
  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンの副反応にはどのようなものがある?

    A. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種した後にみられる副反応の多くは、発熱、注射部位の異常(腫れや赤みなど)です。副反応かどうか心配な場合は接種を受けた医療機関の医師に相談するようにしてください。
    またまれですが、ショックやアナフィラキシー様反応[呼吸困難や全身性のじんましんなどを伴う重いアレルギー反応]などの重い副反応が報告されています。接種後30分以内は特に注意深い観察が必要なので、病院で様子をみるか医師とすぐ連絡のつくところにいるようにしてください。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンの「副反応」で、何度ぐらいの熱が出る?

    A. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種すると、37.5℃以上の熱が出ることがあります。
    発熱のほとんどは接種した当日や翌日に認められます。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種した場所(部位)にはどのような副反応が出る?

    A. 注射した部位が腫れたり、赤くなったり、あるいは硬くなったりすることがあります。一般的にワクチンを接種したときの赤みや腫れは3~4日で消えるとされています。この状態が1か月後でも残る場合もあります。注射部位の異常が目立つときや、その他心配な場合はかかりつけ医に相談してください。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種した場所(部位)への副反応はどのぐらいの割合で出る?

    A. 注射した場所が赤くなったり、腫れたりすることはよく起こり、約70%のお子さんにみられます。
    これらの局所の反応は軽く、自然に回復します2)

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種した後、全身への副反応はどのぐらいの割合で出る?

    A. 全身的な副反応として、発熱、きげんが悪くなる、うとうとするなどが、約10〜20%認められます2)

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンを接種した後の「アナフィラキシー」って何?

    A. ワクチンも薬剤の一種ですので、まれにアナフィラキシーというアレルギー反応が起こることがあります。ワクチン接種後は接種した医師から「30分くらい医療機関内で待機するように」、または「連絡がとれるようにしておくように」という指示がありますが、それは万一アナフィラキシー反応が出た場合でもすぐに対応できるようにしておくためです。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチン接種後に気になる症状が出たらどうしたらいいの?

    A. 腫れが目立つときや発熱が続くときなど、肺炎球菌結合型ワクチンの接種後に気になる症状がある場合は、接種をおこなった医療機関にご相談ください。

  • Q. 肺炎球菌結合型ワクチンの1回目を接種して副反応が出たら、2回目も出やすい?

    A. 1回目のワクチン接種で発熱したり接種部位に腫れが生じた場合、同じワクチンの2回目接種でも同様のことが起こる可能性があります。この場合、予防接種を受けずに肺炎球菌に感染して重篤になるリスクの重さと比べて、接種するかどうかを総合的に判断する必要があります。かかりつけの医師に、まずは相談してみましょう3)

1)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」総論A04 2018年3月作成
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_A-04hukuhannou_202312.pdf 2024/02/22参照
2)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」各論No.10-19,22 2018年3月-2020年10月作成・改訂
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-02haienkyukin_202312.pdf 2024/02/22参照
3)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」総論A-05, 2018年3月作成
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_A-05wakuchin_202312.pdf 2024/02/22参照

接種スケジュールに関するQ&A

監修:医療社団法人 自然堂 峯小児科院長・理事長 峯 眞人 先生

  • Q. ワクチンの接種スケジュールってどうやって知ることができるの?

    A. 日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュールがあります1)。それを見ると、何歳までにどのワクチンを接種しなければいけないかを一覧で見ることができます。
    このホームページにも同じものを掲載しているので、是非、ご参考にしてください。

    1)https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240401_vaccine_schedule.pdf 2024/05/15参照

    「予防接種スケジュール[3歳未満]」シートを見る
  • Q. 肺炎球菌ワクチンの接種スケジュールを立てるポイントは?

    A. 生後6か月以降から病気にかかるお子さんが増えるため、生後2か月がきたらすぐに接種することです。赤ちゃんは生後5~6か月までは、生まれた時にお母さんからもらった免疫などによって、多くの細菌やウイルスなどの感染から守られていますが、その免疫が落ち始めるころから、感染症にかかりやすくなります。まだ抵抗力が未発達のため、一度感染症にかかってしまうと重くなることもあり、入院が必要になったり、ときには命にかかわることもあります。
    生後5~6か月までに予防接種の十分な効果を発揮させるためには、生後2か月になったら、すぐに予防接種を開始することがとても重要です2)

    2)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」総論A-06 2024年4月作成
    http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_06-3seigo2kagetu20231010.pdf 2024/8/9参照

  • Q. 子どもが生後2か月でワクチンを接種するためには、いつ予約すればいい?

    A. 生後2か月からワクチン接種が始まる前に、小児科に予防接種の予約を入れておく必要があります。出産後、2か月というのはあっという間に来てしまいます。そのため、妊娠後期の妊婦健診のときに、予防接種の情報を聞いておき、生後1か月の健診のときには、2か月から始めるワクチン外来の予約を計画できると余裕を持って2か月からのワクチン接種を開始できます2)

  • Q. 肺炎球菌ワクチンの接種方法は、日本全国で同じですか?

    A. お住まいの自治体によって接種方法[個別接種や集団接種など]が違うワクチンがあるため、自治体に確認しておきましょう。

  • Q. 肺炎球菌ワクチンを接種したい日程を決めたら、予約はどのようにするの?

    A. 個別接種で肺炎球菌ワクチンの定期接種を受ける場合は、保護者が接種する医療機関を決めて予約をします。

  • Q. 標準的なスケジュールでワクチンを接種できなかった場合はどうすればいいの?

    A. 接種間隔があいてしまった場合や接種開始が遅れてしまった場合でも、5歳未満であれば定期接種の対象となります。詳しくはかかりつけ医に相談しましょう。

  • Q. ワクチンの接種スケジュールは自分で回数や接種間隔を調整してもいいの?

    A. 適正なタイミングで必要な回数を接種しなければ、せっかくワクチンを接種しても接種で得られるメリットが減少してしまう可能性があります。そのため、ワクチンは決められた接種回数や間隔を守って接種しましょう3)

    3)神谷 元:小児内科 Vol. 55 No. 9:P1411-1418,2023

  • Q. 肺炎球菌ワクチンを生後2か月ではじめられなかったらどうしたらいい?

    A. 肺炎球菌ワクチンは、1回目の初回接種は2か月から7か月未満のため、生後2か月で受けられなくても、7か月未満であれば、標準的なスケジュールで肺炎球菌ワクチンを接種できます。
    詳しくはかかりつけの小児科医に相談しましょう。

  • Q. 肺炎球菌ワクチンを何回接種したか忘れたときはどうすればいい?

    A. 一般的には母子手帳に、いつ、何のワクチンの何回目の接種を受けたかの記録がありますので確認してみましょう。

2024年9月作成 PRV45O003A