小児肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による重い感染症を予防するワクチンです。
肺炎球菌には90以上の型[種類]がありますが、その中で子どもたちに重い病気を引き起こすことが多い種類を選んで肺炎球菌ワクチンが作られています。

小児肺炎球菌ワクチンってどんなもの?

どうして子どもは肺炎球菌ワクチンを接種しないといけないの?

肺炎球菌は、子どもの感染症の二大原因のうちのひとつの細菌です。まわりを莢膜(きょうまく)というかたい殻におおわれた菌で、人間の免疫が攻撃しにくい構造をしています。なかでも小さい子ども、特に赤ちゃんのうちは、まだこの細菌に対する抵抗力がないため、ワクチン接種が必要になります。

肺炎球菌の写真

肺炎球菌ワクチンを接種するとどんな病気を予防できるの?

肺炎球菌は、多くの子どもの鼻やのどにいる身近な細菌です。ふだんはおとなしくしていますが、子どもの体力や抵抗力が落ちた時などに、いつもは菌がいないところに肺炎球菌が入り込んで、いろいろな病気(感染症)を引き起こします。

1)細菌性髄膜炎(さいきんせいずいまくえん)

脳や脊髄をおおっている髄膜に菌が侵入して炎症を起こします1)。肺炎球菌ワクチンが普及する前の日本では、毎年約1,000人の子どもが細菌性髄膜炎にかかっているといわれていました。ときに命にかかわったり、重い後遺症が残ったりすることもあります2)

1)国立感染症研究所:細菌性髄膜炎とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/404-bac-megingitis.html 2024/01/22参照
2)「細菌性髄膜炎診療ガイドライン」作成委員会編集:細菌性髄膜炎診療ガイドライン2014(日本神経学会,日本神経治療学会,日本神経感染症学会監修),2014,南江堂

2)菌血症(きんけつしょう)

血液の中に菌が入り込むこと。放っておくと、血液中の菌がいろいろな臓器にうつり、髄膜炎など重い病気を引き起こす心配がある3)

3)日本小児科学会:日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」各論No.10-19,22 2018年3月-2020年10月作成・改訂
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/VIS_B-02haienkyukin_202312.pdf 2024/01/18参照

3)重症肺炎[菌血症を伴う肺炎]

肺炎球菌という名の通り、肺炎の原因になる。症状が重く、入院が必要になることもある4)

4)千葉菜穂子:日本化学療法学会雑誌 59(6): 561, 2011

肺炎球菌ワクチンはいつ、どうやって接種するの?

肺炎球菌ワクチンは、生後2か月齢以上から接種できます。2か月齢になったらなるべく早く接種しましょう。
標準的な接種開始年齢[生後2か月から6か月]で接種した場合は1)、0歳代[生後2~11か月齢]で3回、1歳代[12~15か月齢]で1回の追加接種をして、合計4回接種しますが、接種回数は、小児肺炎球菌ワクチンをはじめて接種する月齢/年齢によって異なります。 かかりつけ医に相談して、早めにスケジュールを決めましょう。
また、肺炎球菌ワクチンには​種類がありますので、気になる​方は医師にご相談ください。

1)プレベナー 13®電子添文(2021年9月改訂第3版)

標準的な接種開始年齢[生後2か月から6か月]で接種した場合

肺炎球菌ワクチンを接種しているのは、日本の子どもだけ?

肺炎球菌ワクチンは、世界中で導入されています。
2022年時点で、141カ国が肺炎球菌ワクチンを国の予防接種プログラムに導入しています1)

1)International Vaccine Access Center (IVAC), Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health. VIEW-hub. www.view-hub.org Accessed October 17, 2022.

監修:千葉大学真菌医学研究センター 感染症制御分野 教授 石和田 稔彦 先生

2024年4月作成 PRV45O001A